症例報告ブログ

猫の慢性腎不全

今回は猫ちゃんに最も多く認められる、腎臓の病気のお話です。15歳以上の猫の約3頭に1頭はこの病気にかかっているといわれています。お年だからかな?最近痩せてきた…おしっこの色が薄くて沢山でるなんてことはありませんか?

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症例:和猫、雄、12歳
主訴:食欲低下を主訴に来院
院内検査:
血液化学検査で尿素窒素(43.2mg/dl)、クレアチニン(mg/dl)の高値を認めた。
経過:
2週間に一回の皮下点滴を開始。
またフードを腎臓用の処方食に替え、ACE阻害薬の投薬を開始。
2か月後からBUN(39.2mg/dl)およびクレアチニン(1.7mg/dl)の低下を認め、食欲の低下も改善された。
現在,皮下点滴通院はしておらず、療法食およびACE阻害薬による治療のみで、2か月毎に腎数値のモニタリングを行っている。

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・慢性腎不全とは
慢性腎不全(Chronic Kidney Disease:以下CKD)は腎臓を構成するネフロンという組織が徐々に破壊されていき、腎臓全体のろ過機能が低下する疾患です。長期(3か月以上)持続する腎臓のダメージ、または糸球体ろ過量の50%以上の障害を慢性腎不全と定義します。

・原因
様々な原因(遺伝性、先天性、ウイルス、細菌、中毒、腫瘍、糖尿病、腎炎等・・)が考えられており、明確にすることは難しいとされています。

・症状
水をよく飲む、おしっこの回数・量が増えた、体重が減ってきた、食欲・元気がなくなってきた、吐き戻す、毛づやが悪くなってきた等の症状が認められる事が多いです。

・診断
臨床症状、身体所見、尿検査(尿比重の低下)、血液検査(貧血、尿素窒素やCreの増加)、レントゲン検査・超音波検査(腎臓の萎縮)などから総合的に診断します。

・治療方法
一度破壊された腎臓の組織は元には戻らないため、慢性腎不全を完全に治すことはできません。しかし食事の改善や、お薬などで病気の進行を抑えることはできます。
治療としては内科治療となります。

1食事療法(タンパク制限、リン制限、Na制限、脂肪増量(ω-3)、ビタミンD増量)
慢性腎不全用の療法食を使用した猫としていない猫とでは生存期間中央値が633日、264日と約1.5倍の差があったとの報告があります。

2.脱水の補正
脱水は腎不全への進行の大きな要因となります。軽度の場合は通院や自宅における皮下点滴を行いますが、重度の場合は入院をして血管内点滴を行い脱水の補正を行います。

3.高血圧
慢性腎不全の合併症として高血圧が認められる事があります。高血圧は腎臓を傷つける可能性があるため、血圧を下げるお薬を処方する場合があります。

4その他
慢性腎不全に伴い、高リン血症、低K血症、貧血、嘔吐などが認められる場合があります。その場合は、それぞれに対して注射やお薬などを処方し、治療・補正を行います。