胆嚢粘液嚢腫、胆嚢破裂、胆管閉塞
今回は高齢のワンちゃんで見られる病気の紹介です。
いつもよりご飯の食べが悪い…なんとなく元気がない…なんてことが長く続くと要注意ですよ!
・胆嚢粘液嚢腫とは
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に流動性のない粘液(胆泥)が蓄積し、胆嚢が拡張している病態を示します。
重症例では総胆管の閉塞や胆嚢の拡張が重度となり胆嚢壁への血液不足が起きると壊死・破裂し、
内容物が腹腔内に流出することで胆汁性腹膜炎が生じると考えられます。
・原因
原因として脂質代謝異常症、胆嚢の運動性低下、内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症)、
消化管の炎症や運動性異常、細菌感染などが関係しているとされていますが、正確な発生機序は明らかではありません。
・症状
元気・食欲低下、嘔吐、胆嚢破裂や重篤な状態の場合では腹部疼痛、黄疸、発熱、ぐったりして動かないなどがあります。
・診断
特異的な症状があるわけではないため、他の疾患との鑑別が必要となります。
本疾患の診断に有効なのは超音波検査です。
超音波検査では胆嚢内壁に沿って低エコー性に(黒く)見え、内部は胆泥により高エコー性に(白く)見えます。
ゼリー状物質が胆嚢内に貯留しており、胆嚢が拡張している状態です。
教科書では星形、キウイフルーツの輪切り様とも表現されます。
正常の胆嚢で、胆汁(液体)が貯留しています。
・治療
胆嚢が破裂し内容物が腹腔内に流出している場合には外科的に胆嚢を摘出する必要があり、
同時に腹膜炎に対する処置として腹腔内を洗浄します。
胆汁の通り道である胆管にも閉塞が見られる場合には内科的に閉塞が解除できないかを試みて、
解除できない場合は外科的にカテーテルによる解除や胆管の切開、
直接十二指腸につなげる手術を行います。
破裂が見られない場合には内科的に経過観察をしていくこともありますが、
破裂の危険性もあるため外科的な処置を勧めることもあります。
また術後においては膵炎や播種性血管内凝固(DIC)などの合併症を起こす可能性があるため、
術後の治療としては、静脈内点滴、抗生剤、鎮痛剤、場合によっては抗凝固薬、抗炎症剤などの治療を実施します。
————————————————————————————————————————
症例:トイプードル、12歳、未避妊雌
主訴:元気・食欲がない、頻回の嘔吐、ぐったりしている
院内検査
血液検査:白血球数上昇、肝酵素(ALT、ALP)上昇、血中ビリルビン値上昇、炎症数値(CRP)上昇を認める。
超音波検査:胆嚢内高エコー、胆嚢から腹腔内へ胆汁が漏れ出している。
経過:
外科的に胆嚢摘出術を実施し、同時に総胆管の疎通性を確保する目的で胆嚢側、
そして十二指腸切開による大十二指腸乳頭側からのカテーテル洗浄を行った。
(胆嚢内はゼリー状の半固形の粘液塊で満たされていた)
術後は1週間入院による静脈内点滴、抗生剤などの治療を実施し、元気・食欲は回復。
利胆剤などの内科的治療を継続し、2~4週おきに定期的な血液検査を実施しています。
・予防
胆嚢の病気は、定期的に健康診断を受け、初期状態を発見することが非常に大切です。
血液検査で肝臓、胆嚢の数値が上昇している、超音波検査で胆泥貯留が見つけることで早期治療が可能になります。
状態によりますが、内服や食事の変更で進行を抑えることが可能です。
肥満、内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症)もリスク因子として挙げられますので、
特に中高齢のワンちゃんは当院からも定期的に健康診断実施を勧めています。
当院では中高齢(7歳以上)のワンちゃんに対してはしっかりコース(血液検査)や
ワンドック(血液検査+画像検査)をおすすめしています。