症例報告ブログ

猫の下部尿路疾患について

猫ちゃんの膀胱炎症状(血尿、頻尿、粗相など)に悩まされる飼い主様はとても多いと思います。

そもそも猫ちゃんは水をあまり飲まない生き物なので、泌尿器疾患がとても多いです。

今回は膀胱炎が悪化し、尿道閉塞(おしっこの出口に栓が詰まって出なくなってしまう症状)が起きたため、

手術を繰り返した猫ちゃんの紹介をします。

 

症例:3歳去勢雄 雑種猫

おしっこが出ていなさそうとのことで来院。

 

来院時、膀胱はパンパンに膨れ上がり、破裂寸前でした。

こうなると緊急治療が必要です。おしっこが出ない状態は、命に関わります。

陰茎から細いカテーテルを通すと、尿道内に詰まった感覚がありました。

詰まりを解消してあげると、カテーテルから鮮血と同じくらいの赤い尿が出てきました。

 

※膀胱の壁が分厚く腫れ、膀胱の中には汚れがたくさん浮いています(11/21)

 

 

 

 

 

 

 

 

尿道がまた閉塞してしまうといけないので、カテーテルを入れたままにして、入院管理を開始しました。

この子は、以前から膀胱炎を繰り返していたため、膀胱内部がかなり炎症を起こし、粘膜が腫れていました。

さらに、過去に起こした膀胱炎の影響と思われますが、尿道から出てこられない大きさの汚れ

(血餅や、膀胱粘膜が壊死して剥がれ落ちたもの)が膀胱内に多数認められました。

 

白く浮いたようにみえるものが汚れです(11/22)

 

 

 

 

 

 

 

 

数日間カテーテルを入れっぱなしにして管理をしていましたが、そのカテーテルすらもすぐ詰まってしまうため、膀胱の中を綺麗にする手術(膀胱切開)を行いました。

外科手術によって膀胱の壊死した粘膜を綺麗に剥がし、また過去の膀胱炎により生じた汚れを取り除きました。

膀胱の一部は壊死を起こしていたため、切除しました。

 

 

※膀胱切開後の膀胱。まだ膀胱の真ん中に剥がれ落ちた粘膜がみえます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膀胱内の炎症がひどく、まだ今後も大きな尿栓子ができて詰まってしまうことが大いに考えられたため、

数日後に尿道を広げる手術(会陰尿道造ろう術)を行いました。

 

この子は特に膀胱の炎症がひどく、もう一度 膀胱切開の手術を行いました。

その後は膀胱の炎症が落ち着くまでしばらく入院管理をしていましたが、

尿道カテーテルを抜去しても自力できれいなおしっこが出せるようになったため、退院しました。

今は通院で点滴治療を継続してもらっています。

 

 

※術後点滴通院を行ってきれいになった膀胱(5/8)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膀胱炎は尿石症のイメージが強いと思いますが、結石がなくても膀胱炎は起こります。

さらに、雄の猫ちゃんは体の構造的に尿道が狭く、尿道閉塞を起こしやすいです。

尿道が詰まって尿が出ない状態が続くと、腎臓が不可逆的な(治らない)障害を受け、命を落とすこともあり、非常に危険です。

 

次のような症状があったら病院に連れてくることをおすすめします。

・トイレの時間が長い

・何度もトイレにいく

・おしっこの姿勢を取るが少ししか出ていない

・血尿が出ている

・突然大きな声で鳴いて苦しそう

 

当院では、尿道が狭く、閉塞を繰り返す雄猫ちゃんに対し、会陰尿道造ろう術を行なっています。

膀胱炎は、原因にもよりますが、飼育の仕方によって防ぐことができます。

・お水をたくさん飲んでたくさんおしっこに行けるようにする

・適度に運動をする(肥満にさせない)

・ウェットフードを与える(適切な水分量を確保する)

・ストレスを与えない

・トイレを清潔に保ち、1匹に1個以上用意する。

 

どれも基本的なことですが、とても重要です。

猫ちゃんは繊細な生き物です。快適に生活できるよう、一度見直してあげましょう。