症例報告ブログ

赤血球指向性マイコプラズマ感染症

 

・赤血球指向性マイコプラズマ感染症とは

赤血球指向性マイコプラズマが猫の赤血球表面に感染し、溶血性貧血が引き起こされる。

 

・原因

Mycoplasma haemofelis、M.haemominutum、M.turicensisが猫に感染する重要な3株のマイコプラズマと言われている。

 

・症状

元気消失、食欲不振、沈鬱などの非特異的症状に加え、貧血、黄疸、発熱、可視粘膜蒼白、脱水、脾腫、呼吸速迫などが認められる場合もある。

 

・診断

血液塗抹標本にて赤血球表面に散在あるいは直線状に配列する好塩基性の点状物を確認する。あるいは血液からPCRにて遺伝子を検出する事でも診断可能である。

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・治療方法

テトラサイクリン系抗菌薬の投与が有効であるが、食道炎や食道狭窄を招く可能性があり、十分な水と一緒に投薬することが必要。

またニューキノロン系抗菌薬であるエンロフロキサシンも有効と言われている。

貧血が重度の症例では輸血を行ったり、免疫学的に赤血球が破壊されていると判断した場合にはプレドニゾロンを投与する。

 

・予防

感染経路は完全には解明されていないが、雄であること、ノミ・ダニの吸血、咬傷、母子感染などが感染経路として疑われており、これを予防することが有効であると言われている。

 

・症例

症例:和猫 10歳齢

主訴:元気食欲低下、呼吸速迫、倒れた

検査:血液検査の所見より重度の貧血を認め、PCR検査にてM.haemofelisが検出された。呼吸の速迫があったため酸素下での入院治療を行った。

治療:テトラサイクリン系抗菌薬とニューキノロン系抗菌薬を投与した。貧血が進行するならば輸血を考慮したが、抗菌薬の投薬により貧血が改善したため、入院より4日目で退院した。1か月後のPCR検査ではMycoplasmaの検出はなかったため、投薬も終了した。