症例報告ブログ

膿皮症

今回はわんちゃんの皮膚病で最もよく見かける膿皮症(細菌が皮膚に感染した状態)について説明します。特に夏に多く、毛をかき分けてみたらアレ?プツプツしているなんてときは早めに見せてくださいね。

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・症例
犬種:ミニチュア・ダックス  年齢:11歳  性別:未去勢雄
体重:8㎏  飼育方法:室内飼い
主訴:1週間前からの胸~下腹部の痒み。

胸~下腹部にかけて広範囲に、痂皮、表皮小環を多数認めた。
皮膚検査の結果、多数の球菌および好中球を認めた。その他の感染症は認められなかった。
検査結果から、膿皮症と診断し、抗生剤と抗菌剤入りシャンプーを処方した。治療開始から速やかに痒みは軽減し、皮診も認められなくなった。その後、2週間の抗生剤の投与を継続し、再発は認められていない。
症例図
左:治療前の胸部 赤くなりカサブタがついている
右:治療後2週間の胸部 皮診がなくなり、痒みもない

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・膿皮症とは
膿皮症とは、細菌感染による皮膚炎です。鼻の中や陰部あたりに存在する常在菌が、なめることによって、皮膚の表面や毛穴などに拡散、感染すると考えられています。

・症状
皮膚に丘疹(ブツブツ)、膿疱(ニキビ)、表皮小環(円形のフケ)ができ、皮膚に炎症が生じます。さまざまな痒みも伴います。皮膚の深い部分で細菌感染が起こると結節というイボの様になったり、赤くはれたりします。
※いろいろな皮疹(左から丘疹、膿疱、表皮小環)
図1

・診断
皮膚の検査を行います。
◎テープストリップ、スタンプ:セロテープやスライドガラスを使ってどんな細胞、細菌、カビがいるか検査します。
◎抜毛・掻爬試験:毛を抜いたり、皮膚を少し削り取ったりすることにより、ダニがいるか、毛の様子を検査します。
◎ウッド灯:紫外線を当てることによって糸状菌(カビ)を検出します。

テープやスタンプで炎症細胞が菌を食べている像があれば、細菌感染による炎症が起こっている証拠です。ほかにも毛穴にすむダニや、カビによる感染が同時に起こっている場合もあるので各種の検査が必要となります。
顕微鏡図
※左  赤矢印:炎症の細胞(好中球)、赤矢尻:細菌(紺色の点々はすべて)、
※右  黒矢印:好中球が細菌を食べている図

・治療
1.抗菌薬の投与
細菌に有効な抗菌剤を2〜3週間投与を行います。皮膚の深い所で感染が起きているところでは4〜8週間投与することがあります。
ただし、抗菌薬の効果が認められないときは、どの抗生剤が細菌に有効なのか調べる細菌培養検査を行い、適切な抗菌薬を選択する必要があります。
2.シャンプー療法
殺菌または静菌成分の配合されたシャンプーが有効です。ブラッシング後、水またはぬるま湯で流し、シャンプーをよく泡立て、5—10分放置してください。流すときも水またはぬるま湯で行い、タオルドライを行ってください。熱湯、熱風など、患部を暖めてしまうと、悪化してしまうことがあります。症状があるあいだは週に1−2回シャンプーをしていただきます。

・まとめ
膿皮症は細菌感染が起こってしまう皮膚の環境の問題が背景にあることが多いです。皮脂や尿や便の汚れなどはもちろん、根本にアレルギーがあることもあります。また、本人の免疫状態、ホルモンバランスの崩れによっても膿皮症が起こりやすい皮膚の状態になることもあります。治りにくいときは、細菌培養検査、血液検査、レントゲン、エコーなど詳しい検査を行う必要があります。皮膚も全身状態に関わっているからです。

膿皮症は正しい治療を行えば、きちんと治すことができます。ただし、1、2日ではきれいにならないうえに、家での瀕回のシャンプーなど、オーナー様にお手伝いいただく部分が多い疾患でもあります。痒みがなくなり、皮膚がきれいになるよう、一緒に治療していきましょう!