症例報告ブログ

犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

病態

犬パラインフルエンザウィルスやアデノウィルスなどの種々のウィルスや細菌が混合感染し、犬に気管気管支炎を起こす疾患であり一般にケンネルコフと呼ばれます。伝染性の強い呼吸器疾患であり、多頭飼育や不良な環境下に飼育される犬に発生が多く、発症した犬との接触により感染する可能性があります。

 

症状

発咳が主要な症状であり全身状態は良好であることが多いです。乾性の咳が一般的ですが喀痰(気道粘膜からの分泌物)の存在により湿性の咳(タンが絡んだような咳)に変わります。

 

診断

特定の原因ウィルスや細菌を証明することは難しく、一般血液検査や胸部レントゲン検査においても正常から軽度異常所見が認められる程度であることが多いため、多くは感染犬との接触の有無や飼育環境の特定、臨床症状などに基づいて診断します。

 

治療

抗菌薬の投与が第一選択となります。症状の緩和治療として去痰薬、気管支拡張薬、抗炎症薬なども併用します。鎮咳薬の使用は、特に喀痰の貯留が明らかな場合、控えた方が良いとされていますが、発咳が重度であり体力の消耗が激しい場合や就寝不可などの場合に使われることもあります。また、ネブライゼーションによる処置も有効です。

 

予後

高温多湿・冷温乾燥を避け、ストレス改善など適切な環境下であれば治療により予後は良好な疾患です。しかし罹患犬の状態や肺炎などを併発している場合は重症化することもあり得ます。また、適切な治療を行っても短期間での発咳症状の消失はまれであるため、飼い主様には根気よく投薬を頑張って頂く必要もあります。

 

症例

犬種:ビーグル

年齢:6ヶ月例

雌雄:未去勢雄

主訴:

元気・食欲は正常

1週間前にペットショップから引き取った

咳がひどいとの主訴で来院

 

検査

聴診にて心音・肺音正常

体表リンパ節腫脹みられず

レントゲン検査を実施したところ、顕著な異常所見は得られず

 

治療

年齢、症状などからケンネルコフと判断し、ネブライザー、抗生剤・去痰剤の投薬により経過を観察しました。初診時から2週間ほどは咳が増えているように感じたとのことでしたが、根気強く2~3日おきにネブライザーに通院してもらい、その後は症状が落ち着いていきました。1ヵ月経過したころには咳がだいぶ少なくなったとのことで、1ヵ月半経過したころには症状は出なくなったとのことでした。

現在、投薬、ネブライザーは行っていませんが症状もなく元気に過ごしてくれています。