症例報告ブログ

犬の前立腺肥大症

今回は去勢していないわんちゃんによく見られる病気の一つである、前立腺肥大症を紹介します。おしっこの出が悪い、うんちが平べったいなどの症状はこの病気でよく見られるものです。見落としのないように、愛犬を観察してあげてくださいね。

————————————————————————————————————————————

症例:ミニチュアダックス、雄、11歳
主訴:3か月前からの尿失禁、頻尿
院内検査:
身体検査―直腸内触診で前立腺の肥大が触知された
血液検査―特記事項なし
レントゲン検査・エコー検査―6.0×2.6㎝の肥大した前立腺が認められた
経過:
術前検査を行った後、全身麻酔下で去勢手術を行った。そのご尿失禁・頻尿などの臨床症状は消失した。

B00000002

B00000001

前立腺肥大犬のX-ray               正常犬のX-ray

 

s

 

 

 

前立腺肥大犬のエコー画像
————————————————————————————————————————————

・前立腺肥大症とは
去勢をしていない高齢の雄犬に一般的に認められる疾患で、精巣からのホルモン分泌異常により、副生殖腺である前立腺が肥大する病気です。

・原因
精巣で分泌される性ホルモン(アンドロジェンとエストロジェン)の不均衡によります。

・症状
前立腺の肥大により骨盤腔内の臓器(主に直腸や尿道)が圧迫され、排便困難や排尿困難、尿失禁を引き起こします。

・診断
直腸内触診、レントゲン、エコー検査により肥大した前立腺を確認できます。

・治療方法
内科治療:
精巣におけるアンドロジェン合成の阻害作用を示すホルモン剤を7-10日間経口投薬することにより、半年から1年の間前立腺が縮小します。
外科治療:
去勢により精巣で合成されるアンドロジェンがなくなるため、前立腺の縮小を望めます。

・合併症
前立腺の肥大に伴い、血液成分を貯留する前立腺嚢胞の形成や、前立腺に細菌が感染する前立腺炎という病態が起こりえます。後者の前立腺炎では膀胱炎などと同様に血尿を呈することがおおく、悪化すると前立腺に膿瘍を形成するため注意が必要です。