症例報告ブログ

角膜潰瘍

今回は目の病気で最も多い角膜潰瘍の話です。お散歩に行って帰ってきたら、眼をショボショボしている、目やにで目がくっついてしまって開かない!!なんて子は目の表面に傷がついている可能性があります。気を付けて下さいね!!

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<症例>
症例は14才のミニチュア・ダックス、避妊済みの女の子です。昨日から急に左眼がショボショボしていると来院されました。
種々の眼科検査をしたところ、角膜表面に大きな傷ができていました。この子は老年性の白内障でほとんど目が見えない状態だったので、おそらくどこかに目をぶつけてしまったのでしょう。黄緑色に染まっているところが潰瘍になっている部分です(図1)。
フルオレ(+)
 

 

 

 

 

図1 フルオレセイン染色

ヒアルロン酸や抗生剤の点眼、抗生物質の内服で治療を開始しました。傷が深かったのでやや時間がかかりましたが、3週間後にはここまで回復しました(図2)。
フルオレ(-)3W後
 

 

 

 

図2 約3週間後

 

傷の修復のために結膜から延びてきた血管が残っていますが、徐々に消失していくと思われます。
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角膜潰瘍とは、眼の最表面の角膜に傷が付く病気です。
症状として
・眼が赤い
・涙や目ヤニが多い
・眼をしょぼしょぼする、瞬きが多い
・目の周りを触らせなくなる
などがあります。
喧嘩などによる外傷、シャンプーや薬品が目に入ったなどが主な原因となります。
角膜染色(フルオレセイン)試験を用いて傷の有無や大きさを確認しますが、睫毛異常、神経の異常、角膜上皮障害、内分泌障害などの基礎疾患があると診断や治療が難しくなります。
比較的浅い潰瘍は抗生物質やヒアルロン酸などの点眼による局所治療で治りますが、角膜実質におよぶものはコンタクトレンズの装着、眼瞼縫合・瞬膜被覆術、結膜フラップ、角膜ディスク(A Cell Vet)などの外科的治療が必要な場合もあり、潰瘍が進行すると角膜に穴が開いて(角膜穿孔)失明することもあります。
角膜上皮が再生するのに要する期間(ターンオーバー)は約1週間なので、それ以上傷が治らない、あるいは短期間に潰瘍を繰り返す場合は要注意、詳しく検査をした方が良いでしょう。

「目が赤い」「目が痛い」などの症状を示す病気は角膜潰瘍の他にも多くの病気があり、なかには失明に至る病気もあります。
「ちょっと様子をみてから・・・」で手遅れになることもあります。
目の異常をみつけたら、できるだけ早く病院で診察を受けることをおすすめします。