症例報告ブログ

胆嚢粘液嚢腫

今回は高齢のわんちゃんで見られる病気の紹介です。いつもよりご飯の食べが悪い…なんとなく元気がない…なんてことが長く続くと要注意ですよ!

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症例:ポメラニアン、避妊雌、13歳
主訴:元気・食欲がない、嘔吐
院内検査:
血液検査―肝酵素上昇、血中ビリルビン値上昇、炎症数値上昇
超音波―胆嚢内高エコー
経過:
外科的に胆嚢摘出を行った。1週間入院後、元気・食欲は回復。利胆剤の内科的治療を継続し、2~4週おきに定期的な血液検査を行っている。

あああ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胆嚢のエコー画像
(通常胆嚢の中には液体が入っているためエコーでは黒く見えるが、この画像では一部が白い。)

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・胆嚢粘液嚢腫とは
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に流動性のない粘液(胆泥)が蓄積し胆嚢が拡張している病態を示します。胆嚢の拡張が重度となり胆嚢壁への血液不足が起きると壊死・破裂し、内容物が腹腔内に流出することで胆汁性腹膜炎が生じると考えられます。

・原因
原因として脂質代謝異常症、胆嚢の運動性低下、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、消化管の炎症や運動性異常などが関係しているとされていますが、正確な発生機序は明らかではありません。

・症状
元気・食欲低下、腹部疼痛、嘔吐、黄疸など

・診断
特異的な症状があるわけではないため、他の疾患との鑑別が必要となります。本疾患の診断に有効なのは超音波検査です。超音波検査では胆嚢内壁に沿って低エコー性に(黒く)見え、内部は胆泥により高エコー性に(白く)見えます。

・治療
胆嚢が破裂し内容物が腹腔内に流出している場合には外科的に胆嚢を摘出する必要があり、同時に腹膜炎に対する処置として腹腔内を洗浄します。胆汁の通り道である胆管にも閉塞が見られる場合には胆管の切開や直接十二指腸につなげる手術を行います。破裂が見られない場合には内科的に経過観察をしていくこともありますが、破裂の危険性もあるため外科的な処置を勧めることもあります。