症例報告ブログ

皮膚糸状菌

症例:和猫、7ヶ月、雌
主訴:1週間前からの耳および眼瞼における脱毛
院内検査:
皮膚検査:一般的な皮膚検査では異常は認められなかった。ウッド灯における検査を行ったところ、被毛に一致して青緑色の蛍光色を示したため、皮膚糸状菌感染が強く疑われた。
経過:
抗真菌薬を1週間投与したところ改善傾向が認められた。4週間後には完全に毛が生えそろった。飼い主にはこの期間中の手洗いや、猫を飼っている環境の消毒を徹底してもらった。

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投薬前                   投薬後


ウッド灯による蛍光発色ウッド灯による蛍光発色

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・皮膚糸状菌症とは
皮膚における真菌感染疾患(いわゆるカビ)の総称です。人獣共通感染症であり人間にも感染するため、注意が必要です。

・原因
罹患動物や環境中に存在する、Microsporum属やTrichophyton属の真菌が被毛に感染することが原因です。多くの動物では発症が見られませんが、多頭飼育、若齢動物、高齢の免疫不全動物における発症がよく見られます。

・症状
最も多い症状は耳・顔・足先における、痒みを伴わない脱毛です。脱毛部位に痂疲(かさぶたのようなもの)が認められることも多いです。

・診断
一般的な皮膚検査を行い、細菌感染や寄生虫感染が無いことを確かめます。確定診断してはウッド灯という紫外線を出すランプを使用するか、毛の真菌培養検査(1週間必要)を行います。皮膚糸状菌症の確定診断は一回でつかないことも多いため、繰り返し検査を行う必要があります。

・治療方法
外用薬であるクリームの塗布と抗真菌薬による治療を行います。自宅でシャンプーが可能な場合は、感染部位である毛を刈ったのち、抗真菌薬シャンプーで1週間に1-2回洗浄することも有効です。
感染動物の被毛は、人間および他の動物への感染源となるため、他の動物からの隔離および手洗いをしっかり行ってください。