症例報告ブログ

子宮蓄膿症

今回は避妊していないわんちゃんで良く見られる病気です。特に整理が終わってから1~2か月の間に多いので、愛犬の生理の日はちゃんと記録しておきましょうね!避妊もとっても大事です!!

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症例:ヨークシャーテリア、雌、10歳
主訴:食欲の低下と陰部からの出血を主訴に来院
院内検査:
身体検査―発熱39.8℃を認めた。また両眼結膜の充血が認められた。
血液検査―白血球の増加と、炎症数値の上昇が認められた
エコー検査・レントゲン検査-内腔に液体を貯留した、腫大した子宮がみられた
経過:
外科的に子宮摘出術を行った。1週間入院後、元気・食欲は回復した。

子宮蓄膿症

 

 

 

 

 

 

 

 

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・子宮蓄膿症とは
子宮腔内に膿汁が貯留したもので、閉鎖性と開放性の二型がある。まれではるが、卵巣子宮摘出術実施後に子宮断端に蓄膿症を生じることがある。

・原因
① 年齢、発情周期、産歴
6歳以上で、発情後1~2か月の発情休止期に発生。繁殖を繰り返している犬には発生しない。
② 内分泌的要因
発情後(エストロジェンで感作された後)の黄体期(プロジェステロン影響下)に発生する。
③ 細菌感染
膿汁からさまざまな細菌が検出されているが、80%以上は大腸菌である。肛門や外陰部からの常在菌の経腟感染が考えられている。

・症状
さまざまであるが、急性例では1週間ほどで重篤となるため、迅速な治療が必要である。代表的なものを以下に示す。
1. 元気消失、食欲低下または廃絶
2. 多飲多尿
3. 嘔吐および脱水
4. 腹部膨満・下垂
5. 黄褐色~暗赤色の膿の排出
6. 外陰部の腫大

・診断
① 腹部の触診により腫大した子宮を触知できる場合がある
② 血液検査で白血球の増加と好中球の左方移動、CRP上昇
③ 膣スメアで大量の好中球と細菌を確認
④ Xrya、エコー検査にて子宮の腫大と子宮内溶液の確認
⑤ 罹患した子宮の摘出によって確定診断

・治療
外科的療法と内科的療法があるが、救命率が高いのは外科的療法である。
①外科的療法
卵巣子宮摘出術
腹膜炎併発時には、腹腔ドレーンを留置する。術後抜糸までは抗生剤投与を続ける。

②内科的療法
PGF2α製剤と抗生剤の投与。

・予防
繁殖に供しない場合は、早期に避妊手術を行う。