症例報告ブログ

僧房弁閉鎖不全症

最近、愛犬の呼吸がの乱れや、咳が気になりませんか?もしかしたら、心臓の病気が隠れているかもしれません…。今回は、犬、特にキャバリアや高齢の小型犬に発生しやすい、僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気について紹介したいと思います。

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症例:チワワ、雄、9歳
主訴:朝方の発赤、散歩に行きたがらなくなった
院内検査:
身体検査―6段階中4段階目の心雑音が認められた
レントゲン検査―心拡大・肺水腫が認められた
エコー検査―左心房の拡大と僧房弁(左心房と左心室の間の弁)の逆流が認められた
経過:血管拡張剤、強心剤、利尿剤の投薬で発咳の減少が認められた。

【レントゲン検査】

僧帽弁閉鎖不全 図2

僧帽弁閉鎖不全 図3

罹患犬の心拡大と肺水腫          正常チワワの胸部レントゲン

【エコー検査】

僧帽弁閉鎖不全 図4

僧帽弁閉鎖不全 図5

僧房弁における逆流             左心房の拡大

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・僧房弁閉鎖不全症(以下MR)とは
僧帽弁とは左心房と左心室の間の弁の名前です。僧帽弁閉鎖不全症(以下MR)はその名の通り、僧帽弁がうまく閉まらなくなってしまう病態です。そのため、進行してくると、心臓のポンプ機能が低下してしまい、体に必要な酸素が送り出せなくなってきてしまいます。なんとか、機能低下を補おうと、心臓への負担も増える一方です。重度のMRになると、肺水腫や失神などを引き起こすことがあります。

僧帽弁閉鎖不全 図1

・症状
興奮時呼吸が乱れやすい、疲れやすい、咳、安静時の呼吸困難、失神などが見られることが多いです。

・診断
聴診による心臓の雑音の聴取(雑音の強さによって6段階で評価)やレントゲンによる心臓の大きさの評価、心臓のエコーによる血流の逆流・左心房の拡大の確認などを行います。レントゲンやエコーを行うことによってMRの重症度の評価を行うことができます。

 

 

・治療
≪初期≫
・血管拡張剤
・塩分を制限した食事
≪中〜重度(必要に応じて)≫
・強心剤
・利尿剤
・鎮咳薬

MRは根治するものではありませんが、投薬を行うことで、心臓の負担を軽くし、進行を遅らせることができます。ただし、一生の投薬が必要となります。

わんちゃんの呼吸状態、咳に気をつけてチェックしてみてください。安静時、寝ている時など1分間に40回以上の呼吸をしている時は、肺水腫など呼吸が苦しくなっている可能性があります。早めのご来院を!
MRについて、気になる方は、健康診断として、レントゲンや心エコーをやってみませんか?