症例報告ブログ

甲状腺機能低下症

今回は脱毛のお話です。わんちゃんの毛が抜けるという症状には多くの原因が考えられますが、高齢のわんちゃんに多い原因として、ホルモンの異常というのがあります。詳細な血液検査やエコー検査をしていくことで初めて鑑別が出来る疾患ですので、なかなか治らない脱毛もあきらめず病院に通ってくださいね!

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症例
年齢:16歳
犬種:ミニチュアダックスフンド
主訴:背部や腹部の脱毛および掻痒。以前から抗生剤やシャンプーが処方され、一時的には良化するもののすぐに悪化、というのを繰り返している。頸部の皮膚の肥厚やふらつきなどの神経症状が認められる。
血液検査:肝酵素の上昇が認められた(ALT:97U/L、ALP:746U/L)
甲状腺機能検査:T4(0.5ug/dL)、fT4(<3.86pmol/L)の低下およびTSH(1.09ng/mL)の上昇が認められた。
診断:甲状腺機能低下症
治療:レボチロキシンナトリウムを20ug/kgで1日2回投与を開始した。
   1か月経過し、初診時より皮膚の病変が良化してきている。

甲状腺機能低下症
   
          投薬前                 投薬後

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・甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏によって引き起こされる疾患である。
甲状腺ホルモンはほぼ全ての臓器、細胞に対し代謝活性を促したり、分化増殖を亢進させる、体に欠くことのできないホルモンである。

・原因
①原発性甲状腺機能低下症
②二次性甲状腺機能低下症
③三次性甲状腺機能低下症
④先天性甲状腺機能低下症
以上の4つがあるが、95%以上が①原発性甲状腺機能低下症である。
①はさらに自己免疫疾患であるリンパ球性甲状腺炎と原因不明の特発性甲状腺萎縮の2つの病態に大別される。

・犬種
4~10歳における発生が多く、中型~大型犬に多い。
好発犬種としてはゴールデンレトリーバー、ビーグル、ドーベルマン、ミニチュアシュナウザーなどが挙げられる。

・症状
主訴としては元気消失、神経症状、動きが鈍くなった、運動を嫌がる、体重の増加、低体温、よく寝る、脱毛、皮膚の肥厚、難治性の皮膚炎など多岐にわたり、はっきりしないものが多い。

・診断
臨床症状およびスクリーニング検査結果から疾患を疑い、甲状腺機能検査によって診断する。
血液検査では高コレステロール血症や高トリグリセリド血症が最もよく認められ、軽度の貧血や肝酵素の上昇がみられることがある。
甲状腺機能検査ではサイロキシン(T4)、遊離サイロキシン(fT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度を測定する。
甲状腺機能低下症ではT4、fT4の低下が認められ、ネガティブフィードバックによってTSHの上昇がよく認められる。

・治療
一度発症すると完治ができない疾患であるため、治療としては甲状腺ホルモンを生涯にわたって投与する必要がある。
投与量が多すぎると逆に甲状腺機能亢進症という疾患が引き起こされる可能性があるため、定期的に病院でホルモン値の測定や血液検査などを行い、適切な量で投与されているかチェックする必要がある。

・予後
適切な量のホルモン剤が投与されていれば予後はよい。