犬の皮膚病について 皮膚検査の重要性
まず初めに、犬や猫も我々人と同じように体の表面は毛や皮膚から構成されています。
体で最大の器官であり、外界からの物理的・化学的・微生物な有害なものが体に侵入するのを防いでいます。
人と大きく異なる点として表皮の厚さは、
犬では人の半分しか無い事・人間は弱酸性なのに対し、犬はほぼ中性です。
この点も犬では皮膚病が多い原因の一つと言われています。
皮膚病が起こる原因も細菌感染・アレルギー疾患・ホルモン疾患・先天性などその原因は様々です。
症状も痒みが出たり・脱毛が認められたり・皮膚が分厚くなったりと症状も様々です。
400以上の皮膚疾患の報告があり、症状が似ている場合も多く、すぐにその原因を特定することはできません。
診察に十分な時間を費やして、正確な情報を得ることが大切です。
そこで大事になってくる一つの手段として、皮膚検査があります。
いくつか例をあげます。
ノミ取り櫛検査
体表を櫛でとくことでノミの有無を確認します。
ノミの感染があると非常に強いかゆみを伴います。
ウッド灯検査
紫外線を用いたもので、「皮膚糸状菌・真菌」を検出する
皮膚糸状菌に感染した被毛は蛍光発色します。
皮膚糸状菌に感染すると円形に脱毛を認めることが多く
人に移るケースも。
真菌培養検査
培地を用いて培養で
真菌を検出することもできます
皮膚掻爬検査
皮膚を鋭匙で少し削ります。
ヒフヒゼンダニ、ニキビダニなどを検出
脱毛や痒みの原因になります。
スタンプ検査
病変にスライドグラスを押し当て
顕微鏡で観察します
細菌感染やマラセチアなどの病原体を
確認します。
皮膚パンチ検査
皮膚の一部をくり抜き、病理検査に出します。
鎮静や全身麻酔が必要なるケースもあるので
ハードルは高くなることはありますが
原因がわかりづらい皮膚疾患や改善が悪い時などに有用です。
皮膚型リンパ腫・天疱瘡などの診断に役立ちます。
その他アレルギー疾患・甲状腺機能低下症などのホルモン疾患を疑うときは、血液検査を併用したり、
細菌の同定の為、細菌培養を実施するなど検査は多岐にわたります。
ここで一つ症例を紹介します。
年齢:13歳 犬種:ミニチュアダックスフンド 性別:去勢雄
若齢時から食事アレルギーがあり、皮膚に痒み・脱毛は認めたが、ここ1か月で急激に悪化したとのことで来院されました。
真菌培養検査・スタンプ検査・細菌培養検査を実施しましたがすべて陰性でした。
抗生剤・消炎剤・かゆみ止めなどでは目立った改善は認められず、一般的な治療では効果は期待できないと判断しました。
そこでパンチ生検で皮膚を病理検査に出すことにしました。
その結果、『天疱瘡』と検査結果が返ってきました。
この病気は免疫疾患の一つで、いくつかの免疫抑制剤を組み合わせることで初めて治療が成り立つ病気です。
診断してからでないと免疫抑制剤の併用は難しいです。
踏み込んだ検査を実施しないと、治療・診断にたどり着けない一つの例かと思われます。
総括
一言に皮膚の痒み・脱毛と言えど、その病気の成り立ち・原因は多岐にわたります。
診断にまで長く時間や費用が掛かることもあります。
とりあえず検査を実施すればいいと言うものでも一概には言えませんが、一歩踏み込んだ検査を実施することで、診断にたどり着くこともあります。
その先の治療も診断がついたからと言って、必ず上手くいくものでもありません。
ですが、治らずどうしてよいかわからない時は、一度相談してみてください。
してこなかった検査の中に答えがあるかもしれません。
一匹でも多くのペット達が、病気から解放されることを切に願います。